紅一点×SnowMan⑦ (ページ5)

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今回は松岡くんが主演のドラマに出ている。

メインキャストが松岡くんと伊野尾くんって
こともあって、歌舞伎のある中で、撮影時間が
限られていることを理解していただいている。

同じ事務所の先輩が出ているからこそ、
こうしてどちらもできているのだと思う。

深夜、早朝の撮影に応じてくれる
スタッフさんにも感謝だ。

阿『そろそろ準備しないと、夜の公演間に合わないよ？』

阿部ちゃんがちらりと楽屋を覗いて教えてくれる。
準備があるからなのかすぐに出て行ってしまったけど。

「うん。ありがとう。康ちゃん。起きて。」

軽く揺すると寝ぼけているのか
ぎゅーっと抱きしめてくる。

「康ちゃん？」

向『んー。まだ寝かせてーなー。』

「寝ぼけてないで。準備しないと間に合わないよ。」

向『ん？ああ！すまん。めっちゃ寝てたわ。』

目をこすりながら起きてきた。
その顔はちょっと不細工で笑えてしまう。

向『そんな笑わんといてなー。』

「だって。顔が面白くて。ほら、準備するよ？」

康ちゃんを部屋から追い出して、歌舞伎の準備をする。

ふぅ。正直、公演の合間だけが
ゆっくりと休めるタイミングではあるのだけど。
そのことをみんなには言い出せず、今日まで来ている。

ほんと、気力だけで
どうにか生きているっていうのが正しい。

母が亡くなって、今まで治療費なんかを
全て出していたのが無くなった。

それによって働く意味はなんなのだろうと
思ってしまったこともあったけど。

今はそんなことを考える余裕すら
無くなってしまっているのが現状だ。

だけど、これは誰にも悟られたくない。
みんな、秀明くんから引き継いだ歌舞伎の成功のために
精一杯取り組んでいるのだから。

だから最近はなべくんと距離を置くようにしている。
彼は私の変化に必ず気づいてしまうから。

どうか千穐楽までは持ってほしい。
そんなことばかり考えてしまう。