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「秀明くんに伝えといて。こんなことしなくてもいずれ広まっていただろうし、ヨリを戻そうなんて思ってないからって。」
牧『、、、。』
牧さんは私の言葉に返事することなく、
車を走らせた。
撮影も終わり、朝方に自宅に帰る。
今日は夜の公演まで何もないから少し眠れるかな。
シャワーを浴びてリビングに戻る。
そこには、あの日から全く変わらない風景が見える。
風磨を自宅に呼んだ日。
ハーブティーを出したコップすら片付けられない私は
重症だと思う。
だけど、彼との時間を終わらせたくない気持ちが強くて。
片付けたら本当に終わってしまうんだと認めてしまうから。
そんなことができない私は未練たらたらだ。
仮眠をとり、冷蔵庫を開ける。
忙しすぎて全く機能してない冷蔵庫は空っぽだ。
「まあ、いっか。」
食べなくても。
最近はほとんど食べてないし。
何もないリビングの一角に
かつてあったアクスタは全てなくなっている。
持ち帰ったあたり、風磨らしいな。
私は乾いた笑いを浮かべた。
それから残り数公演をこなして無事に千穐楽を迎える。
みんな晴れやかな中、こんな気持ちになっているのは
私だけかもしれない。
毎年なら千穐楽後は打ち上げがある。
だけど私は参加しない。
秀明くんもいて、みんなが楽しんでいる様子を
見ているのは辛すぎるから。
牧さんや雅には参加してきなよと伝え、
1人で自宅に帰る。
エントランスに入ろうとしたら、
キャップを深く被った人が壁に寄りかかっている。
ストーカー？まさかね。
そんなことを考えながらオートロックの解除する。
松『A！』
「えっ？北斗くん？」
松『うん。』
まさかの北斗くんだった。
見覚えのあるシルエットだなと思ってはいたけど。
「どうしたの？」
『んー。ちょっとね。部屋行ってもいい？』
「う、うん。」
突然の訪問者に戸惑いながらも、
一緒にマンションの中に入る。
記者とかはいなかったから大丈夫だろう。
一緒に部屋に入ると、彼は一目散にキッチンへ向かった。
トートバッグの中から食材を取り出していく。
『Aは座ってて。』
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作者名：しょこら | 作成日時：2024年2月28日 15時
