箱庭の夢【黒】 (ページ8)

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𝟖 ページ8

「なんでAって俺に対してずっと敬語なの？」

俺ら、同級生なのに。…少し拗ねているように見えるのは気のせいだろうか。

「え、うーん、タメ口で話すことの方がなんだか慣れなくて、親以外には敬語…かも？」

「え、そうなの？」

「人と話すこと自体が慣れてなくて…だから敬語になりがちというか」

「なるほどね。じゃあ別に距離とられてるわけではないんだ」

安心した、と言う目黒くんの顔は晴れやかだ。

「目黒くんを拒否することなんてできません…！！」

目黒くんのこと拒否して距離をとったら、罪悪感凄いだろうし、ましてや周りになんて言われてしまうか……考えただけで寒気が…

「じゃあ仲良くなっていけば、いつかAの敬語もとれてくるのかなー」

それはそれで楽しみかも、と笑う目黒くんは無邪気な男の子で、きゅん、と胸が高鳴った。気がしただけにしたい。

というか、
　
「…休憩、ちゃんと休まなきゃダメですよ？」

「俺はAといるだけで癒しをもらえてる気がするけど？」

「そういうことじゃなくて！」

もう。冗談がうまくて困ってしまう。
目黒くんが集合に遅れても困る。鞄に飴かなにかが入っていたからそれを渡して(ご機嫌どりして)戻ってもらおう。

「目黒くん、これ」

「？」

目黒くんの手のひらにいちごの飴を置く。

「これ食べて、リフレッシュして、練習頑張って」

「！」

だから、早く戻った方がいいですよ、と言いかけたら目黒くんを直視してなくてもキラキラしたオーラが見えてくる。

「やば！飴もらっちゃった！」

うれし！とにこにこの目黒くんだけど、そんなに飴が好きだったのかな、あ、それともいちごが好きなのかな？

「俺、家宝にするわ！」

「？！食べてください」

やっぱり目黒くんは、変わってるとこ、ある。

本当、ありがとう！！なんて言って美術室を飛び出していった。

自分とはタイプが違うこそ、目黒くんとの時間は楽しいんだろうなって。その考えが嬉しいようで恥ずかしいようでこそばゆかった。