𝟐𝟏 ページ21
ぱたり、と止まった。それが依存を加速させてしまうなんて、きっと彼は思っていないんだろう、って。私はとっくのとうに知っていたのかもしれない。
なにがぱたりと止まったか、それはクラスメイトからの無視、嫌がらせだった。
目黒くんに大泣きしているところを見られた、恥ずかしい、そんな風に少し気まずい思いをしながら、翌日学校に行って、教室に入ったとき。おはよう、と声がした。
いつもはわたしが教室に入った瞬間面白いぐらい静かになるのになあ、誰か一緒に教室に入ってきたのかと、後ろを振り返っても誰もいない。なんだろう？と机に向かおうとしたところで、女の子数人が話しかけてきた。
「Aさん、…！」
「へ」
「ごめんなさい、ずっと、見ないふり」
その女の子達は、最初嫌がらせを注意してくれた子達だった。まあ、結局嫌がらせをしてきた女の子達には逆らえなくて途中で注意もしなくなってしまったけれど。
なんで急に、？と思いながらも謝ってきてくれたことが凄く嬉しい。くすくす笑われるよりも存在をいないことにされた方が苦しいから。
「んーん、大丈夫です、ありがとう」
なるべく優しく、なるべく笑顔で、答えられていただろうか。
「…ごめん、本当にごめん……私達が無視されてもおかしくないのに、話してくれて、ありがとう」
また、お話してもいい？
不安そうにそう言う女の子達に、もちろん、と笑った。
嫌がらせしていた子達はというと、わたしを見るなり顔を青くした。さすがに先生に言われたのかな、って思うけど、先生からはそんな素振り感じれなくて。一体なんだろうと考えていたら、朝のHRが終わっていて、目黒くんから声をかけられた。
「おはよう、A」
「あ、目黒くん…おはよう」
「もう、大丈夫でしょ？」
「え？」
「嫌がらせ、止まったでしょ？」
良かった、ちゃんと"話"ができる人で、と笑う目黒くんは爽やかそうで爽やかじゃなかった。
ああ、目黒くんが言ってくれたんだ、という安堵とよくわからない焦燥感。嫌がらせが止まって、無視されなくなって嬉しいはずなのに、もやもやが止まらない。
____ああ、目黒くんのおかげで止まったからか、と納得した。目黒くんがいなかったら、気づかなかったら、わたしはずっとこのままだったから。だから、目黒くんがわたしのこと気にかけてくれなくなったら、また嫌がらせが再開するかもしれないという不安があるのだ。
これじゃあ、生き地獄みたいなものじゃないか。
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作者名：もりの | 作成日時：2024年4月4日 21時
