𝟑 ページ3
お昼休み。教室はがやがやとしていてわたしだけが静かで浮いている。いつものところでご飯を食べよう、と美術室へ向かう。
たまーに、物を隠されたり、捨てられていたりすることも実はある。支障がないからあまり気にしていないけれど、お母さん特製お弁当は絶対に手を出されたくないし、昼休みぐらい平穏な時間を過ごしたいので、絶対に教室から離れようと決めている。時間があれば絵も進められるし、と美術室で昼食をとるのがわたしの中では当たり前になっていた。
早足で向かっていると後ろから「A！」と聞き覚えのある声がした。なんだか嫌な予感がしたけれど、無視するのはわたし的にはNGなので振り返ると、
「あ、気づいた」
「……目黒くん」
案の定目黒くんだった。
彼と話すようになってから数日。目黒くんは周りの目なんて気にせずどこでも話しかけてくる。
日に日にクラスの女子どころか校内の女子生徒全員にじろりと見られているような気がするんだけど、わたしの気のせいだったりしないかな。
なんてくだらないことを考えていると、目黒くんが急にしゃがんで目を合わせてくる。
「そんな固まってどうしたの」
「急に声かけられたからびっくりしたんですよ！」
「ごめんごめん。Aいたからおもわず声かけちゃった」
そんな風に爽やかに笑う彼が眩しい。
「Aは購買行くの？」
「いや、行かないですけど…」
「あ、そうなの？どこか向かってる様子だったから、てっきり購買向かうのかと」
確かに、美術室の方面て購買もあったっけ。
いつもお弁当だから購買なんて無縁な場所だけど。
「…あ、よく見たらお弁当もってる。教室で食べないの？」
「い、つも、美術室で食べてるといいますか」
教室で食べないの？という言葉に少しどぎまぎしながら答える。
その答えに目黒くんはなんだか納得したようで、ああ！と声をあげる。
「絵かくから？えー！いいな！美術部の特権？」
俺、美術室とか授業でしか入ったことねー！とわくわくしている目黒くんに少し笑みがこぼれる。
「いや、部の特権とかではないと思うけど…まずまず部員でまともに描いてるのわたしだけで、部室も独り占めみたいなものですし」
「へー」
そういうもんなんだあ、て何故か感心している。
あ！とまたもや急に声をあげる目黒くん。どうしました？と声をかける前に目黒くんがつづける。
「俺も美術室でご飯食べちゃだめかな？」
えっ
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作者名：もりの | 作成日時：2024年4月4日 21時
