𝟏𝟑 ページ13
やっとお昼休み。
先生に事情は話したから問題ないとは言えど、1人だけジャージというのはさすがに目立つみたいで。授業中もずっと周りからの視線が気になって仕方なかったけれど、やっと解放されたみたいだった。
すっかり濡れてしまった制服のことを忘れていて、1限目後にさっと美術室の窓際に干したけれど、今日は天気がいいからもう乾いているだろうか。
そんなことを考えながらお弁当を持って美術室に向かおうとすると、少し大きいジャージの袖をくいっと引かれる。
「え、」
後ろを振り返ると、目黒くんがわたしのことを見つめていた。
朝の出来事を思い出して、周りにあの子たちがいないか確認する。…教室にはいないようで一安心して、はあ、と息をつく。それで目黒くんはどうしたのだろうと口を開こうとする前に、目黒くんが口を開いた。
「A」
「どうしたんですか、目黒くん」
「どうしたの、制服」
「……ちょっとドジって。先生に許可もらってジャージ着てます」
「…ドジるってなに。てかジャージ、Aのじゃないよね？」
今日の目黒くんはご機嫌ななめなんだろうか。
いつもよりも言葉が刺々しくて、更にグイグイくる。
「あー、その、ジャージ、は、親切な方に貸してもらいまして」
「貸してもらうって…」
誰に、と言いかけたときに、目黒くんは凄く驚いた顔をした。
「！これ、こーじの…」
ぼそっと呟いた目黒くんの声はわたしには聞き取れなくて、聞き返そうとしたところで、朝の女の子たちの喋り声が廊下から聞こえてくる。
「っごめんなさい、目黒くん、わたし、急いでるから」
話しているところを見られたら、また、色々言われてしまう。目黒くんにも迷惑はかけたくない。
「！A…っ、」
目黒くんの呼ぶ声を背に、教室から飛び出した。
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作者名：もりの | 作成日時：2024年4月4日 21時
