箱庭の夢【黒】 (ページ1)

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毎日毎日、わたしはあの箱庭に囚われる。

「はあ」

わたしのちいさなため息は誰にも気づかれずどこかへいった。

学校を苦痛だと思い始めたのは、いつからだっただろうか。
それじゃなくても対人関係が苦手なのだ。学校のこの小さな"箱庭"のような教室はわたしにとってはとても息苦しかった。それを、改めて感じたのは高校入学後、すぐだったと思う。

「お前、うじうじしててうざいね」

ケラケラと笑ったのはカースト上位の女の子だった、気がする。それにつられてなのか、くすくす笑う周り。特になにもしてないのに、おどおどしていたのが気に食わなかったのか、いつの間にかクラス全員での無視が始まっていた、ただ、1人を除いて。

「これ、君が描いたの？」

みんなが無視する中、ただ1人、この人だけは声をかけてきてくれた。そのときのわたしは相当びっくりしていたんじゃないだろうか。

「えっ、あっはい」

「へえ、そうなんだ」

じーっと絵を見つめているのでなんだか恥ずかしくなってあたふたする。

「あ、あの、それ、途中だし、あんまりうまくないし、そんな見てもしかたない、っていうか、」

「え？これで途中なの？凄いね、うまい、よね？これ」

なぜか疑問形。

「俺は君の絵、好きだけどな」

そんな風に笑ってくれたのはクラスのムードメーカー、目黒蓮くんだった。