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「いつもの体力増幅ポーションを3本頼むよ」
「3本!?」
常連の注文に目を見開く新規の男。
体力増幅ポーションに簡単に15万払う人など見たことがなかったのだろう。
だが、私と常連との取引は大体こんなものだ。
「毎度あり」
「ルナのポーションは特別だからね。このくらい訳ないよ」
常連が笑うと、新規の男が質問をする。
「兄ちゃん、この詐欺…………コホン。超絶美少女お姉さんのポーションはそんなにすごいのか?」
「当然だよ。他のところのポーションは、効果が切れたあと、まともに動けなくなったりする副作用があるだろ?」
「常識だな」
新規の男は常連の話に頷く。
再び詐欺師呼ばわりされかけた私は、ムッとしたまま2人の会話に耳を傾ける。
「だけど、彼女のポーションにはそれがないんだ」
「そんなことが可能なのか!?」
「仕組みは全く分からないよ。だけど本当だ。それにポーション自体の質も相当良い。ルナのポーションほど効果を実感できるものはないよ」
「代償無しで最高レベルの効果を得られると……」
ここまで常連の話を聞いた男は、私の顔を見た。私は真顔で見つめ返す。
正直、この男がポーションを買う決意をしようがしまいがどちらでもいいのだが、面倒だからさっさと決めてほしい。
「冒険者にとって、まともに体を動かせなくなるのは命取りだからね。その間にまた敵が来るかもしれないし、強敵ならそもそも効果時間内に倒せる保証もない」
私が説明せずとも、常連が勝手に売り込みをしてくれるのは大変結構だし楽なのだが、何せ暇だ。
話に耳を傾けるのも面倒になってきたので、髪の毛の毛先を掴んでボーッと眺めたり、今日は何時に帰れるかななんて考えたりする。
その間も常連と新規の話は続く。
「ポーションっていうのは本来、使い所を間違えれば逆効果になる可能性だってある、まさに諸刃の剣だろ?」
「たしかにそうだな…………」
「彼女はポーションの分野の天才だよ。副作用のないポーションなんて、他の人には到底作れないと思わないか?」
「そりゃあ分かるし、喉から手が出るほど欲しいがね……」
「何せ金が……」と呟きながらいつまでたっても考え込んでいる男を見かねた私は、軽くため息をつくと、両腕を広げた。
「改めまして、ようこそルナのポーション屋へ。ここでは、お客様のお望みの効果をノーリスクで提供いたしましょう」
ルナはそう言うと、妖麗な笑みを浮かべた。
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作者名:星月未来 | 作者ホームページ:https://mypage.syosetu.com/2614418/
作成日時:2024年4月18日 19時