Time*5 ページ7
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あれから阿部先生とさよならして､蓮と2人で駅まで歩く。
どこか気まずい空気が流れる。
せっかくの2人きりなのに。
｢さっきはごめん｡｣
｢…何が？｣
｢阿部先生に変な言い方した｡｣
｢あぁ､｣
｢好き…なんでしょ､阿部先生のこと｡｣
好きじゃないとも言えないし､好きだとも言えない。
そんな私はただ黙ることしかできなかった。
｢誤解されるような言い方してごめん｡せっかくいい感じだったのに､俺が邪魔しちゃったでしょ？｣
｢邪魔とかしてないよ｡それに､私が阿部先生とどうにかなることはないから｡｣
｢先生だから？｣
｢それもそうだけど､私は別に…｣
｢別に？｣
阿部先生のことをそういう意味で好きじゃないよ。
なんて､言える勇気はない。
｢蓮が言ったこと､嫌じゃなかったから｡｣
これが今の私の精一杯。
｢それってどういう…｣
｢あ､電車きちゃうよ､走らなきゃ！｣
｢電車？…あ､待ってよA！｣
ホームまで走って電車に乗り込んだ。
ほんとは急いでなんかないのに。
わざと電車を乗り過ごして､少しでも長い時間蓮と一緒にいたいのに。
こういう時､逃げることしかできない私は臆病だ。
こんなだからいつまでたっても片想いのままなんだよ。
好き､って言えないんだよ。
たった一言勇気を出すだけなのに。
いつまでこの想いを秘密にするつもり？
・
・
・
｢じゃあまた明日｡｣
｢またね｡｣
｢A！｣
家の中に入ろうとしたら､蓮に呼び止められる。
｢今日､一緒に帰れて嬉しかった｡次は水曜日な｡｣
｢うん｡水曜日｡｣
私がそう言うと､蓮は少し微笑んだ。
嬉しそうに見えるのは気のせい？
私の勘違い？
蓮も私といるのが好きって思ってもいいの？
少しは期待してもいいのかな。
｢れ､蓮！｣
離れていく背中が名残惜しくて､呼び止めてしまった。
｢ん？｣
そんな優しい顔を見せられたら､もっと好きになる。
｢わ､私も…嬉しかった｡蓮と一緒に帰れて｡｣
勇気を出してそう伝えると､満足そうな顔でまた笑う。
明日の朝が待ち遠しい。
早く明日にならないかな。
蓮と2人きりの登校時間。
私だけが蓮をひとりじめできる時間。
この時間が永遠に続けばいいのに。
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作者名：夏目 | 作成日時：2024年4月5日 19時
