Time*1 ページ3
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｢A､蓮くんもう来てるよ､早く行きなさい｡｣
｢はーい｡｣
憂鬱な月曜日の朝。
お母さんにそう言われて､急いで玄関へと向かう。
｢行ってきます！｣
｢行ってらっしゃい｡｣
ドアを開けるとそこには､
｢おはよ｡｣
向かいの家に住んでる幼なじみ､蓮がいる。
｢おはよう｡｣
｢よし､行くか｡｣
｢うん｡｣
私はなぜかいつも蓮とこうして2人で登校する。
駅まで歩いて10分。
電車に乗って40分｡
最寄り駅から学校までは5分ぐらい。
学校に着くまで約1時間。
私はこの時間がすごく好き。
その理由は単純で､私は蓮が好きだから。
蓮とは小学生の頃､私が引っ越してきた時に知り合った。
それから小学校､中学校､高校までずっと同じ学校。
でも同じクラスになることはほとんどなくて､そうなったのは今までたったの2回｡
1回目は小学5年生の頃。
2回目は､今｡
高校2年生。
久しぶりの蓮と同じクラス。
登校してる時からずっと､授業が終わるまで一緒。
同じ教室で授業を受けることがこんなに幸せなんて､思わなかったな。
今の私の席は蓮の斜め後ろ｡
授業中にこっそり蓮の背中を見つめてみたりする。
そうすると退屈な時間が早く過ぎる。
これはきっと､片想いの特権だと思う。
蓮はクラスで人気者だし､学校の中でもかなりモテる。
そんな蓮の姿を1番長くひとりじめできているような気になって､優越感に浸ってることは誰にも言えない。
｢A､聞いてる？｣
｢…ん？｣
｢ふは､全然聞いてないじゃん｡｣
｢え､何か言ってた？｣
｢今日1限目数学じゃん｡課題やった？｣
｢数学？やったよ｡｣
｢さすがじゃん｡まぁ阿部先生の科目だもんな｡｣
｢あ…うん｡まぁね｡｣
阿部先生は私のクラスの副担任で､数学を担当している。
蓮の中では私が阿部先生を好きってことになってる。
あれは1ヶ月ぐらい前､放課後に蓮を含めた何人かと話していた時だった｡
会話の流れで誰が好きかって話になって､咄嗟に阿部先生が好きって嘘をついた。
先生を好きって言えば､これ以上私の好きな人の話を深く聞かれることはないと思ったから。
あの時､好きな人はいないって答えたらよかったのに､なんであんな嘘をついちゃったんだろう。
ほんとは違うのに。
私が好きなのはずっと前から蓮なのに。
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作者名：夏目 | 作成日時：2024年4月5日 19時
